社会インフラを支え、人材育成に注力する特殊車両整備の専門企業

道路維持作業車や鉄道車両といった特殊車両整備を行う株式会社キムラ(旧社名:木村自動車工業株式会社)。
1964年の創業以来、一般的な自動車整備業とは一線を画し、特殊車両の整備といった社会インフラを支える重要な資産を守り、顧客企業の事業継続に欠かせない存在です。
「言葉だけではない、本当のサービスをお客様におとどけする」―創業以来掲げるこの経営理念を体現しているのが、代表取締役社長・木村高人さんです。国土交通省との災害時対応契約、除雪車両の24時間体制でのサポートなど、社会の安全を守る重要な役割を担っており「人材は資産」という信念のもと、組織文化の醸成に力を注いでいる。

Q1:創業の経緯と事業の専門性についてお聞かせください。
A(木村氏): 当社は私の父が24歳の時に立ち上げた会社で、創業から約60年になります。業種としては自動車整備業という括りになりますが、当社で扱っているのは主に特殊車両です。道路維持作業車と呼ばれる、インフラのメンテナンスをする車両、また一部鉄道の運輸車両といった車両なども手掛けております。
お客様にとってこれらの車両は金の卵を産む鳥と同じで、利益を上げるための大切な道具なんです。それを扱う私たちは、一般自動車整備とは違った心構えが必要だと考えています。お客様の仕事の背景、内容、社内の対応状況など、細かい心配りが求められます。
当社は災害時の対応について国土交通省と契約を結んでおり、要請があれば災害現場に出動いたします。また、除雪関係の車両を扱っておりますので、現地でトラブルが発生した際には24時間体制で対応する体制を整えております。

承継への葛藤と、人材育成。

Q2:木村社長が事業を承継された経緯についてお聞かせください。
A: 物心ついた頃から「会社の後継者である」という認識で両親から育てられましたが、18歳頃までは親が敷いたレールの上を進むことに、大きな抵抗感がありました。大学進学も当初は考えておりませんでしたが、高校生活の中で自分を見つめ直す機会があり、進学を決意。最終的に事業承継を決断したのは28歳の頃です。
大学卒業後、経営者としての資質を学ぶ2年間の研修プログラムに参加させていただきました。帝王学、経済学、宗教学などを学ぶ場で、「後継者は容易に社長になれるという認識は誤りであり、実際には多大な責任と覚悟が必要である」と実感したことが一つの転機でした。
専務として父と10年間業務を共にし、41歳で代表取締役に就任いたしました。

Q3:現在、特に注力されている取り組みについてお聞かせください。
A: 最も重視しているのは「人材育成」です。現在、全社員に携帯電話を支給し、LINEやSNSといったツールを活用して、休日も含めた情報共有体制を構築しております。私自身は現場作業には携わっておりませんが、現場責任者の動きを把握し、情報を共有することは極めて重要だと考えております。
また、朝礼では社員が日替わりでスピーチを行う取り組みも実施しております。プライベートな話題から業務に関することまで、テーマは自由です。
管理職という立場では、指導という形でのインプットが中心になりがちですが、私が重視しているのは、社員からいかに意見を引き出すか、アウトプットを促すかという点です。学校教育とは異なり、社員が何を望み、どのように考えているかを理解した上で、必要に応じて方向性を調整していく。そうした手法を採用しております。人材は「資産」ですので、この点には特に力を入れております。

次に、今の若者にとって会社は、人生の中心ではなく、人生を構成する大切な要素なのだと思います。仕事はライフスタイルの中の一部であり、家族や趣味、友人と並列な場所に仕事が置かれていると感じます。会社に人生を預けるのではなく、人生の一部として会社と付き合う。それが今の時代の働き方の感覚です。
ですので、仕事とプライベートのオンとオフを大切に考えます。企業としても働き方改革として、休日を増やしたり、福利厚生を充実させてゆく中で、業績も上げていかねばならないという難題となります。これに取り組み解決することが、会社存続にかかわることは確かです。

受け継いだ理念、託す未来―中継ぎとしての使命

Q4:創業以来、大切にされてきた価値観についてお聞かせください。
A: 当社の経営理念に「言葉だけではない本当のサービス」という言葉があります。言葉だけでなく、行動で示すということです。お客様から信頼を得るためには、コミュニケーション能力と実務能力、その両方を兼ね備えた人材が必要です。そうした人材を育成したいという思いは、常々社員に伝えております。
基本的にサービス業という業態ですので、機械と向き合う時間も多いのですが、当然その背後には車両を所有されるお客様がいらっしゃいます。そうした方々との対話、交渉の中で、様々な業務を遂行していくわけです。
現在の社員がこうした価値観を受け継いでくれておりますので、私が頻繁に言及する必要はなく、既に企業文化として定着しているというのが実情です。

Q5:今後の展望について教えてください。
A: インフラ関連車両を取り扱うという事業の核心部分は不変ですが、単に整備と販売を行うだけでなく、社会インフラの仕組みにおいて不可欠な存在でありたいと考えております。インフラ整備は未来に対する投資ですから。
私は創業者ではありませんので、野球に例えればリリーフピッチャー、中継ぎの立場です。企業は100年先も存続していかなければなりませんので、私の後も当然、次の世代が引き継ぐことになります。そうした役割を担う者として、次世代への承継方法を考える時期に差し掛かっております。
現在は、当社を将来的に誇りある仕事をする企業として、より確固たる基盤を築きたい、本質に徹底したいと考えております。
また、企業は設備投資や人材育成など、経費もかかります。AIの社会進出により、これまで組織で行われてきた業務が、個人でも可能な社会になるのかもしれません。企業として、より付加価値の高い業務を追求しなければ、競争に勝てなくなると思います。

若者へのメッセージ:人生のピークはいつも未来にある

「人生の花をいつ咲かせるのか、という問いを最近、高校生に投げかけました。多くは『20代後半』や『30代』と答えますが、私は、人生の花は自分がこの世を去る直前に咲かせるべきだと考えています。人生100年と言われる時代ですが、自分が歩んできた人生を振り返った時に、関わってきた人々が共に歩んでくれている。自分の人生は良かったと実感できる瞬間が、最大のピークだと思います。これから未来ある若い世代には、『人生のピークは常に未来にある』という認識を持っていただきたい。最終的には、家族や会社の社員が幸せになっている姿を見届けて、この世を去ることができれば、それが最良の人生だと考えております」

Profile

木村 高人 Takahito Kimura

株式会社キムラ

1988年帝京大学法律学科卒業。1991年に株式会社ヤナセ(機械事業部)へ入社し、機械事業の現場と経営基盤を学ぶ。1997年木村自動車工業株式会社入社、専務取締役を経て2007年代表取締役に就任。社名を株式会社キムラへ改め、事業領域を拡大。車両整備に加え作業装置分野の技術力を強みに、高速道路・鉄道など社会インフラを支える車両分野に特化した経営を行っている。

http://www.kimura-inc.co.jp/

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