半世紀の経験と最新技術で、日本の国土強靭化を担う

日本の国土インフラを支える測量・設計・補償コンサルタント業を手がける株式会社リナン。1975年の創業から約50年、山梨県身延町を拠点に道路や河川、鉄道などの大型公共事業において、あらゆる建設プロジェクトの起点となる測量技術を提供してきました。「測量がなければ、ものづくりは始まらない」——そう語るのは、代表取締役社長の望月侑さん。実質的に4代目として2023年4月に就任した望月さんは、ICT・DX技術の積極導入と徹底した働き方改革により、業界の常識を覆すイノベーションで経営改革を実践。伝統的な技術力と最新テクノロジーを融合させ、「技術のリナン」として業界をリードし続けています。

Q:測量業とは、具体的にどのような仕事なのでしょうか。
A:測量、設計、補償コンサルタント業務を手がけています。なかなか世間的に日の目に当たらない仕事ですが、日本のものづくりにおいて測量は欠かせません。道路を広げる、橋を直す、建造物を新しく作る——こうした際、まず実態を測り把握しないとものづくりがスタートしないんです。インフラ、日本の経済成長を支えるインフラの一番初めの部分を私たちが担っています。
土地や建物を測るところから始めて図面を作成し、それに対してどこまで道路を広げるか、どういう建物を建てるかという絵を描くのが「設計」です。測量設計は、まさに人づくり、ものづくりの分野なんですね。
依頼主は基本的に国、県、市町村といった公共団体が多く、また大手の民間企業様からも工場建設や分譲地造成などのご依頼をいただきます。現在、弊社が主に取り組ませていただいているのが今注目のリニア中央新幹線の建設関連です。全ては測量から入っていくので、測量しないと何も始まらないんです。

ICT・DXと組織改革で業界の常識を覆す

Q:望月社長は、もともとこの業界に入るつもりはなかったそうですね。
A: 全くなかったです。サッカーが好きでずっとやっていましたから。幼少期に母を病気で亡くしましたが、父から「強い男になれ」と教育され、サッカーに明け暮れました。山梨の名門、帝京第三高校に進学し、3年間親元を離れて八ヶ岳の麓で全寮生活。サッカー部として夏のインターハイ・冬の全国大会に出場しましたが、度重なるケガで大きな挫折も味わいました。
その後、帝京大学法学部に進学し、世の中のルール(法律)を一から学びました。卒業後は一部上場企業に就職できましたが、氷河期世代で経済情勢が厳しい中、父から人生で初めて「事業を手伝ってくれないか」とお願いされたんです。衝撃を受けました。自分のなすべきことは一つしかないのかなと思い、2011年に会社に入りました。現場も担当者として一から全て経験しました。
当時の社長である父、創業者である叔父、そして創業を支えた亡き母の恩に報いたい—— その思いが今も私の原動力です。事実上、私は4代目なんです。

Q:2023年の社長就任後、どのような改革を行ったのでしょうか。
A: 就任してまず着手したのは内部統制、組織改革です。年功序列は全部取っ払うと宣言しました。トップダウンでしたが、若かろうが年配だろうが、仕事の成果や外部コミュニケーションができる人、マネージャーになりうる人間を数名ピックアップして役職につけました。一つの部署を三つに分けて「自分たちで考えて好きなようにやってください、責任は私が持つから」と伝えました。
社員には「アジャイル経営」と「ウェルビーイング経営」を導入していくと説明しました。組織を割ることで、小さな検証や成功を何度も繰り返して何が良いかを導き出す。週に1回の工程会議で細かく検証を行う効率化と、社員とその家族を第一に考える健康経営に取組みました。
最も力を入れたのが働き方改革です。就任する直前まで、過度な残業も多く担当技術者達の疲労が蓄積してしまう今の時代ではありえない状況でした。まさに少子高齢化による、特に建設産業特有の人手不足がもたらす負の連鎖の渦中にいました。ここをまず改革し、残業をしたければ上司に申請する、必要なければ却下。その結果、残業代だけで年間1000万円強を抑えることに成功しました。あとは徹底的なDXの導入です。紙タイムカード廃止、打刻も全て専用スマートフォン、車両管理も全てデジタル化。業務効率と生産性が上がり、この2年間でヘッドハンティングも含め新卒も2人採用し、従業員を9人増やしました。

技術力と人を大切にする企業文化

Q:「技術のリナン」と呼ばれているそうですね。会社として大切にしていることは何でしょうか。
A: 山梨県の測量設計業協会に加盟している会社が40社ある中で、弊社は昔から「技術のリナン」とお客様や同業者様からも言っていただいてきました。専門技術者としての誇りを持って業務に当たりなさいということは、社員によく伝えています。
業界全体が今、ICT、DXで大きく変わっています。平成30年に国土強靭化政策が本格化し、「国土強靭化基本計画」が閣議決定されたことを皮切りに、私たちの仕事は事業の存続を揺るがすほどの大きな転換期を迎えましたが、ICT技術やDX技術に一早く取り組んだ結果、売上高上昇による修正復活を遂げました。
そして何より、人は財産です。離職率はとても低く、旅行やバーベキューなど年間を通してイベントも打ちます。毎年必ず個人面談をして「会社のすごくいいところ一つと、めちゃくちゃ悪いところ一つを遠慮なく言ってくれ」とヒアリングしています。一番は楽しく、風通しのいい会社であること。それはこれからも変わりません。

Q:今後の展望について教えてください。
A: 大きく二軸になってくると思っています。一つは業界の統廃合です。世代交代が難しく、最新技術はないが信頼ある基礎技術をもつような会社との協力が必要になってきます。弊社の創業者の座右の銘でもある「自他共栄」——弊社だけが潤うのではなく、地域や同業者も含めて業界全体の知名度が向上し潤っていく。これを大事にしたいんです。
もう一つは技術面です。驚くべきことは、このAIによるデジタル社会の時代に日本の国土の約50%は未だに明治時代の地図を使っています。この先進国の日本がですよ?測量は継続して丁寧にやっていく必要があります。時に山の中に入って機械を担いで測る、昔ながらの製法こそが基礎であり、これからも絶えず基礎を強くしていきます。一方で、最新技術のドローンやレーザスキャナを使った「3D計測」は、これからは民間の様々な会社様に使っていただきたいと考えています。
そして、日本は地震と災害の大国です。そう遠くない未来には南海トラフ地震起こると予測されています。いつ災害が起きてもインフラを整備できるようにデータ化してクラウド上に保存しておく。歴史的建造物も含め、保守保全、安全のために「今」を計測し保存管理しておく必要があります。大切な財産を点検し管理を強くしていく時代だと思っています。

目標を最後までやりきり成し遂げること

多様性の社会も大事ですが、歴史を振り返ると偉人たちもスポーツ界も、人には見えない並々ならぬ努力をしているんです。自分のやりたいことを見つける。一つの目標を持ったら、最後までやりきる力。それによって成長していきます。昭和なこと言っちゃうと、やらなきゃダメなんですよ。目標に向かって努力することが大事なんじゃないかなと思います。若いからこそできることってたくさんあるし、それを尊重してあげたい。歴史は繰り返します。リーダーが変われば考え方も変わるし、面白い時代になってきた。その中で生き残っていくためには、一つを成し遂げる力をつける。頑張ってほしいですね。

Profile

望月 侑 Mochizuki Yu

株式会社リナン

1982年山梨県身延町生まれ。幼少期にサッカーに打ち込み、帝京第三高校でインターハイ・全国大会に出場。2005年帝京大学法学部法律学科卒業後、盟和産業株式会社入社。2011年株式会社リナン入社、現場から全ての業務を経験。2022年同社取締役就任、2023年同社代表取締役就任。ICT・DX技術の積極導入と働き方改革により、測量業界に新しい風を吹き込んでいる。

https://rinan.co.jp

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