三代で紡ぐ信頼の物語 ― 山梨の資源循環を支える

1977年の創業以来、金属資源のリサイクル業を営む株式会社大丸金属。収集運搬から中間処理、リサイクル原料化までを一貫して行う「現場対応力」と、約半世紀にわたり築き上げてきた「信頼関係」を強みに、山梨県内外の製造業や建設業を支えています。
代表取締役社長の林弘成さんは、早稲田大学大学院修了後、三菱化学株式会社で営業・商品企画に従事。その後、「自分にしかできない仕事で、地域への恩返しをしたい」という想いから家業である大丸金属に入社し、3年前に三代目社長に就任しました。「地域への責任と信頼」を大切にしながら、最新設備による生産性向上と、社員が誇りを持って働ける環境づくりの両面から、地域インフラ企業としての質を高め続けています。
山梨クィーンビーズやヴァンフォーレ甲府へのスポンサー活動など地域貢献にも積極的で、「100年先も、地域と地球の未来を繋ぐ企業でありたい」――そんなビジョンを掲げ、次の半世紀に向けた挑戦を続けています。

Q:会社の創業について教えてください。
A: 創業は1977年ですが、そのルーツは九州・福岡にあります。創業者である祖父は福岡の出身で、当時日本の鉄鋼業の中心地であった八幡製鉄所と関わりを持ったことが全ての始まりでした。そこで金属資源を単なる「ゴミ」ではなく、新たな「資源」として社会に循環させる必要性を強く感じ、この事業を起業したと聞いています。
最初は神奈川県の川崎市で法人化して事業を行っていたのですが、約40年前に大きな転機が訪れました。当時の主要なお取引先様が山梨県に工場を移転することになり、それに合わせて当社も山梨へ拠点を移す決断をしたんです。ちょうど山梨県が工業団地の造成を進めていた時代でもあり、現在の敷地と設備を構えることができました。
今の当社にも脈々と受け継がれている「徹底した顧客志向」の精神は、この時の先代の決断によって形作られたものだと感じています。単なる移転ではなく、当社が山梨という地に根を張り、事業を大きく拡大させる「第二の創業」とも言える出来事でした。

一貫対応力と、半世紀の信頼関係

Q:林社長ご自身の経歴について教えてください。
A: 私は山梨県で生まれ育ち、大学、そして大学院へ進みました。幼少期は親の仕事を見て「なんとなく継ぐのかな」と思っていましたが、中学・高校と進むにつれて、そうした気持ちは自分の中から消えていきました。自分は自分の道を探して生きていきたいと考え、前職の三菱化学に入社した時も全く継ぐ気はなくて、東京で自分の見つけた仕事をずっと続けていきたいという気持ちでした。
前職では営業職として入り、その後商品企画などへ仕事の幅を広げていきました。そこで出会った尊敬できる先輩方の存在が大きかったですね。特に、ある先輩の徹底した「顧客主義」は、今の私のビジネスパーソンとしての基盤そのものになっています。「悪い情報ほど包み隠さず、すぐに伝える誠実さ」「レスポンスの速さは誠意そのものである」「会社という看板ではなく、自分という人間を信頼してもらうこと」――この3点を叩き込まれました。
そうして働く意義を模索する中で、あるタイミングで「自分にしかできない、人生一度きりの仕事」を突き詰めたいと考えるようになりました。もう一つは、自分が生まれ育った山梨や、この会社を育ててくださった地域の企業の皆様への恩返しをしたいという気持ちが芽生えたことです。振り返れば、今の自分があるのは山梨県と地域の皆様のおかげ。この会社で自分が仕事をすることが恩返しにつながるのではないかと考え、戻る決心をしました。

Q:大丸金属の強みについて教えてください。
A: 大きく2点あります。一つは、収集運搬から自社での中間処理、そして最後のリサイクル原料化まで、一本化した現場対応力です。金属が出る経路としては製造業の生産工程から出る端材と、建物の解体時に出る金属の大きく二つがあります。山梨県内を中心に、県外全域からもご依頼をいただいており、その全てのプロセスを自社で完結できることが大きな強みです。
もう一つは、50年近く続けてきた中で築き上げてきた歴史と、多くのお客様との信頼関係です。設立2、3年の会社とは見え方も圧倒的に違うと思いますし、この積み重ねてきた信頼関係こそが一番の強みだと考えております。約半世紀にわたり「会社と会社」、そして「人と人」との繋がりを大切にしてきた歴史そのものが当社の資産であり優位性です。

Q:現在、最も注力している取り組みを教えてください。
A: 「ハード(設備)」と「ソフト(人)」の両輪での組織強化です。リサイクル業界も効率化が求められる中、最新の重機や加工設備の導入による生産性向上を強力に推し進めています。同時に、それによって生まれた余力を、社員の技術教育や安全管理、資格取得支援など働きやすい環境づくりに充てることで、企業としての総合力を高めることに注力しています。
社員の年齢層は20代から50代までバランスよく在籍しており、平均年齢は40代後半くらいです。20代・30代の若い人たちがこれからの会社を作っていくので、人材育成には本当に力を入れていきたいです。社員が夢や誇りを持てる会社でありたいと思っています。

質を高め、地域インフラとしての責任を果たす

Q:大切にしている価値観や、地域との関わりについて教えてください。
A: 当社が最も大切にしているのは「地域への責任と信頼」です。リサイクル業は地域インフラの一部であり、社会の循環を支える重要な役割を担っています。その責任を深く自覚し、一つひとつの業務に誠実に向き合うこと。それが地域から必要とされ続ける唯一の道だと考えています。
具体的な地域貢献活動としては、山梨クィーンビーズやヴァンフォーレ甲府へのスポンサー活動を行っています。これは単なる企業PRではなく、地域のスポーツ文化を支えることで、山梨県全体を盛り上げたいという想いからです。自分自身が山梨で生まれ育ち、この地域に育てていただいたという感謝の気持ちがあります。だからこそ、事業を通じた資源循環だけでなく、様々な形で地域に恩返しをしていきたいんです。
また、環境への取り組みという観点では、リサイクル業そのものが循環型社会の実現に貢献する仕事です。金属資源を「ゴミ」ではなく「資源」として社会に還元していく――この創業者の理念を受け継ぎ、次世代に豊かな地球を引き継ぐことが私たちの使命だと考えています。社員一人ひとりにもこの仕事の社会的意義を理解してもらい、誇りを持って働いてもらいたいですね。

Q:今後の展望について教えてください。
A: 中長期的な人員数や売上目標というよりは、「質をいかに高めて維持するか」に重要性を感じています。この業界はメーカーのように自社で物を作って売るのではなく、お客様が出したものをリサイクルするビジネスです。いたずらに規模を拡大するより、質を高めてお客様の期待に誠実に応えていくことに軸を置いています。
私たちの仕事は地域インフラの一部を担い、社会の循環を支える重要な役割を持っています。その責任を深く自覚し、一つひとつの業務に誠実に向き合うこと。そうした仕事を通じて、地域から必要とされる企業であり続けることが、確かな信頼関係を築く唯一の道だと考えています。
弊社のビジョンである「大切な次世代、そしてさらにその先を見据え、豊かな地球を引き継ぐ」ことの体現――その実現のために、単に規模を拡大するのではなく、「地域になくてはならないインフラ企業」としての質を高め続けることを重視しています。資源循環の重要性が増す中で、確かな技術とコンプライアンスで信頼に応え続けること。そして、社員が誇りを持って長く働ける会社であること。そうした足元の積み重ねこそが、未来への責任を果たす道だと考えています。100年先も、地域と地球の未来を繋ぐ企業でありたいですね。

挑戦し続けることの大切さ

今は情報へのアクセスが非常に容易で、調べるだけで頭でっかちになりがちなところがあります。ですが、実際に現場に出てみないと分からないことがたくさんあります。失敗を恐れずに、なるべく多くの打席に立って、一歩踏み出すチャレンジングな姿勢で仕事に向き合ってほしいなと思います。失敗から学べることこそが、成長に繋がります。私自身、高校時代に時間を浪費してしまったという強烈な反省と後悔が、今の原動力になっています。『学び続けること』や『挑戦すること』の大切さを骨身に沁みて感じたあの時期があったからこそ、今の自分があるのだと感じています。

Profile

林 弘成 Hironari Hayashi

株式会社大丸金属

1985年山梨県生まれ。早稲田大学大学院修了後、三菱化学株式会社に入社。グループ会社である三菱化学メディア株式会社にて営業主任として営業・商品企画等に従事。その後、家業である株式会社大丸金属に入社し、営業部、専務取締役を経て、2022年に代表取締役社長に就任。「地域への責任と信頼」を掲げ、資源循環を通じて地域インフラを支える企業経営に取り組んでいる。

https://www.daimaru-kinzoku.co.jp/

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