常岡 太郎
株式会社ほったらかし温泉
藤田 康稚 Koji Fujita
2025年8月、富士北麓地域に「ふじた整形外科」が開院した。院長の藤田康稚さんは、脊椎外科指導医として手術の最前線で活躍してきた専門医。開業から半年足らずで1日140名もの患者が訪れ、第2駐車場の整備を急ぐほどの盛況ぶりだ。
「手術をした方がいい人」を治してきた外科医が、なぜ開業という道を選んだのか。「手術をしなくて済む人を増やしたい」――その答えには、地域医療への深い想いがあった。整形外科とリハビリテーションを軸に、骨粗鬆症とスポーツ整形に特化。16名のスタッフとともに「笑顔を絶やさない」をビジョンに掲げ、富士北麓地域の健康寿命を延ばすという使命に挑んでいる。
Q:ふじた整形外科は、どのような診療を行っているのでしょうか。
A:整形外科の診療とリハビリテーションを行い、地域の住民の方に整形外科医療を提供しています。基本的には一般の整形外科とリハビリテーションですが、特に骨粗鬆症とスポーツ整形を主軸にしているのが特徴です。
患者さんの年齢層は、半分くらいが60代以上の高齢の方ですが、40代から80代まで幅広く来院いただいています。スポーツ整形では、試合で怪我をした子どもたちも来てくれるようになりました。10代、20代はまだ比較的少ないですが、今後この年代がもっと増えてくれるといいなと思っています。
Q:他の整形外科クリニックとの違いや強みは何でしょうか。
A:まず、リハビリテーション施設が広く、理学療法士も4名いるので充実した体制が整っています。さらに5月までに2名増員予定で、より手厚いサポートが可能になります。リハビリの部屋を大きくとっているので、患者さんにゆったりと治療を受けていただけます。
そしてもう一つの大きな強みは、私が「脊椎」の専門医だということです。整形外科の中でもサブスペシャリティといって専門性が分かれているのですが、私は首や腰を専門にずっとやってきました。首が痛い、腰が痛いという患者さんには専門的なアプローチができます。開業している先生で脊椎専門医はそれほど多くないので、これは大きな特徴だと思います。
Q:脊椎外科の専門医として手術をメインにされてきた中で、なぜ開業という選択をされたのですか。
A:きっかけの一つは、隣でクリニックをやっている同級生から「一緒にやらないか」と誘われたことです。初めは手術ができなくなるので断っていたのですが、この富士北麓地域は整形外科の開業医が少ないんです。
脊椎の手術はすごく細かく、手術のパフォーマンスが一番いい時期にあえて開業するのは今しかないと思いました。でも、一番大きかったのは考え方の転換です。今までは「手術をした方がいい人」を治してきましたが、逆に「手術をしなくて済む人」を増やさないといけないと思ったんです。健康寿命を長くする、そういう予防医学的なアプローチを目指そうと決めました。
Q:診療や患者さんとの接し方で大切にしていることを教えてください。
A:「笑顔」を大切にしています。スタッフもそうですし、患者さんも笑顔でいられるように。ビジョンとして「笑顔を絶やさないように」というのをメインに決めていて、「笑顔、心身、運動」この三つを掲げています。
クマのキャラクターも親しみやすさを大切にしたくて作りました。よく「クマモン」とかいじられるんですけど(笑)、キャラクターがあった方が患者さんに親しんでもらえるかなと思って公募して選びました。
開業して半年、毎日の業務に追われて突き進んでいる感じですね。最初は50人診るのに夜9時までかかりましたが、今はスタッフが協力してくれて、100人くらい診ていても時間内に終わるようになりました。看護師さんが薬の準備をしてくれたり、事務さんがカルテを打ってくれたり、スタッフがどうやったら早くなるか工夫してくれています。ただ、患者さん一人当たりの時間を減らしすぎると不満が出てしまうので、しっかり話は聞きつつ効率化を目指しています。
Q:骨粗鬆症の診療にも力を入れているとのことですが、どのような取り組みをされていますか。
A:骨粗鬆症は高齢化が進む中で非常に重要な課題です。骨がもろくなることで骨折のリスクが高まり、それが寝たきりや要介護状態につながってしまうケースが多いんです。特に脊椎の圧迫骨折は、一度起こると連鎖的に他の部位も骨折しやすくなります。
私は脊椎の専門医として、骨粗鬆症による圧迫骨折を数多く診てきました。手術が必要になる前に、いかに予防するかが重要なんです。当院では骨密度の測定はもちろん、適切な薬物療法と運動療法を組み合わせた治療を行っています。
リハビリの先生たちと連携して、骨を強くするための運動指導も丁寧に行っています。60代以上の患者さんが半分くらいを占めていますから、
この世代の方々が元気に活動できる期間を少しでも延ばせるよう、予防的なアプローチを大切にしています。健康寿命を延ばすという目標の中で、骨粗鬆症対策は欠かせない柱の一つですね。
Q:今後の展望について教えてください。
A:一つはスポーツ整形をさらに強化したいです。富士北麓地域には、市立病院などにすごくいい先生がいるんですが、クリニックレベルではスポーツに特化した先生がなかなかいません。ここを拠点に、怪我をした学生さんのスポーツ整形を充実させたいです。
そしてゆくゆくはPRP療法などの再生医療も取り入れていきたいと思っています。富士北麓地域の健康寿命を延ばすという目的に向かって、できることを一つずつ増やしていきたいですね。
『若いうちの苦労は買ってでもしろ』と言いますが、外科医として家に帰れないような時期もありましたし、患者さんが亡くなってしまったり『手術しなきゃよかった』と思ったり、つらい思いもいっぱいしてきました。でも、そういうのを乗り越えた先には絶対明るい未来があります。楽な方に行きがちですが、それだけだといい未来がないんじゃないかなと思うので、ある程度『雑草魂』じゃないですけど、苦労を乗り越えていく強い使命を持ってやっていただきたいです。頑張って乗り越えてください。
藤田 康稚 Koji Fujita
ふじた整形外科
1976年東京都生まれ。2003年山梨医科大学卒業。臨床研修医を経て2006年山梨大学整形外科医局に入局。2012年博士号・整形外科専門医、2014年脊椎外科指導医を取得。脊椎外科の専門医として手術の最前線で活躍した後、「手術をしなくて済む人を増やす」予防医学へとシフト。2025年8月、富士北麓地域に「ふじた整形外科」を開院。「笑顔、心身、運動」をビジョンに掲げ、地域の健康寿命向上に取り組んでいる。
https://fujita-seikeigeka.jp/